伊方原発3号機の運転差止め
仮処分決定
1月17日広島高裁で伊方原発3号機の運転を差し止める仮処分を決定した。
仮処分というのは判決確定までの間、当事者の権利に著しい不利益や差し迫った危険が生じないように権利保全を裁判所が暫定的に認める措置のことである。
裁判は一定の期間がかかり判決確定まで効力はないが仮処分は決定までの期間が短く決定以後すぐに効力が発生する。
高裁の決定は異議申し立てや抗告によって覆らない限り法的効力が続くのである。
伊方原発3号機は19年12月から定期検査で停止中だが今年の3月下旬には再稼働を予定していた。
四電は異議申し立てをするらしいが仮に今回の司法判断が覆ったとしても3号機を再稼働するまで9ヶ月から1年近くまでかかるらしい。
四電側は原発が止まると火力発電の燃料費で1ヶ月に約35億円の収支が悪化するという。
しかしそれは現時点での単なる収支計算だろう。
建設時の膨大なコスト、定期検査費用、万一事故の際の莫大な費用、廃炉費用、事故の際の人や環境に与える甚大な悪影響などを考慮すると決して原発が低コストだとは思われない。
せっかく造ったのだからなんとか使おうという従来の発想はやめたほうがいい。
電力会社には一層のコスト削減に励んでもらう必要がある。
それでもコストの増加は電気料金に跳ね返ってくると思うがある程度のことは仕方ないだろう。
活断層と火山
原発至近に活断層は存在しない。
阿蘇山の大規模噴火による影響は軽微である。
という国の原子力規制委員会の判断には過誤ないし欠落があると裁判所は判断したようだ。
中央構造線が佐多岬半島から吉野川沿いに走り淡路島の南部を抜けて近畿地方の金剛山地の東縁に至るということは自分たちも子供の頃に地理か社会科で習った。
活断層の上に原発を作るという発想は東日本大震災の後だったら100%なかっただろう。伊方原発は福島原発の事故前から既に稼働していたからで今なら到底立地すら考えられなかったと思う。
膨大な金をかけて造ったものだからできるだけ使って元を取ろうという浅ましい気持ちは国も電力会社も捨てることだ。
地質のことだから何千年、何万年先に大きなズレがあるかは分からないが想定内のリスクである。
裁判所の判断は素人目にも妥当と思う。
今月の12日には伊方原発3号機原子炉容器内で核燃料を取り出す準備作業中に核分裂反応を抑える制御棒一体を誤って引き抜くという前代未聞のトラブルを起こしたばかりである。
世界の原発事情
2018年1月現在、運転中の原発は世界で443基、出力は約4億1千万kwといわれる。
1位の米国は99基、約1億kw、2位はフランスの58基、約6600万kw、3位が日本で42基、約4100万kwと続く。
かつては日本も技術力でもって世界各地で原発建設を促進するということを東芝を中心とし国策の1つとして掲げていた時期があった。
福島原発の事故後、先進国は原発の安全性について懐疑的になり建設にもブレーキがかかっているようだが新興国、発展途上国はこれからまだまだ増加しそうな勢いだ。
そろそろ目を覚ませ
2011年の福島原発事故を踏まえて発足した原子力規制委員会の全委員長、田中俊一氏が2017年年9月の退任の挨拶の中で
「原子力の平和利用は核の軍事利用を廃し原子力利用の安全を頑なに追求する文化システムがなければ成り立たないもの。
安全神話への慣れと裏腹に原子力安全に対する注意力が年々薄れ、原子力科学技術の果実をひたすら追い求めてきた結果が福島原発事故に繋がった。
発足した委員会,規制庁は発足当初から重い荷物を背負って頂上のない山登りをしているようなもの。
頂上には決してたどり着かない過酷な山登りだ」と言っています。
差止め決定を受けても国は依然として原発の再稼働を推進していくということのようだ。
原発建設に対する世界の趨勢についても憂慮すべき問題であるが取り敢えずここで日本は原発政策について立ち止まって熟慮,再考して欲しい。
喉元を過ぎれば熱さを忘れるというが福島原発の廃炉にこれから何年かかるかはっきりした見通しも立っていない。
今後もどれだけの費用がかかるかよくわからないというのが事実だ。
福島原発の事故後に住み慣れた我が家に未だ帰れない人が大勢いるというのに・・・。
そして未だに事故後の汚染水が増え続けているという現実。
汚染水にしてもすったもんだの挙げ句の果ては所詮薄めて海洋放棄というのがオチだろう。
もうこの辺でわれわれも目を覚まさなければならない。