今日の日経新聞第にMMTは現実的か?というテーマでニューヨーク州立大学教授S・ケルトン氏、富士総研早川英男氏、東京財団政策研究所小林慶一郎氏、法政大学教授小黒一正氏の4人の論客がそれぞれ見解を述べている。
そもそもMMTとは何か
モダン・マネタリー・セオリーの略で現代貨幣理論のことをいう。
具体的にいうと「日本のような国は政府の借金の外国人保有率や外貨建てのモノの割合が少ない為、政府の債務超過による破綻はまず起こりえない」という理論らしい。
従って政府が赤字国債をいくら発行したとしてもそれを日銀が購入して社会保障費や公共投資に使ってもそれは所詮回り回って国民の懐へ入るだけで望ましいインフレの範囲内であれば一向に構わないというありがたいご託宣だ。
日本の現状
今の日本のインフレ率は1%強であるからいくら国がお金を使っても大丈夫というわけだ。今の日本は約1100兆円という膨大な借金があるが、反面家計貯蓄は1700兆円ある。
いざとなれば国民のこの貯蓄を以て国の借金を返済すれば人様(外国)には迷惑をかけることはないというわけだ。
一昔前、日本の膨大な借金を根拠に国家は破綻の危機を迎え国債は暴落し日本経済は大変なことになる。
それに備えて日本円は持たずに外貨、特に米ドル預金をしなさいという主張がなされたことがあるが今のところ日本円が暴落するような気配はなくその主張は当たっていない。
寧ろ現状は有事の円ということで国際的に何か不安が醸し出されたら米ドルよりも日本円が買われるという場面が多いのは確かだ。
4人の見解
ケルトン氏はMMTが数十年来主張してきたことが正しいと証明しているのが今の日本だという。
財政赤字が自動的な金利上昇につながってもいないし量的緩和も機能している。
仮にインフレが深刻になった場合などは歳出削減や増税などの対処条項を事前に決めておいて早期に対策を打てばいいという。
彼女はこの理論の提唱者の有力な一人である。
先日、来日での記者会見である記者が「それでは10月の消費税導入もこの理論でいけば必要ないということですか」との問いに彼女は「仰るとおりです」と答えていた。
国にお金はなくとも国民がそのぶんおかねをもっているのでだから国としては破綻しないという理論だ。
要は国民の懐をあてにしているだけだ。
早川氏は、MMTは政府が国債発行の形で借金を重ねても帳簿上は預金が増えるだけだから国債の発行は際限なく可能だといっているが国債発行額が増えれば金利は上がる。
金利という価格の制約が国債発行の限界をもたらすはずでMMTは間違っているという。
小林氏は政府債務がこのまま膨張し続ければ安定した経済環境を維持できなくなる。
インフレが起きそうになったら対策を打てばいいというが政府債務が大きい時に金利を上げたら政府への信任が失われる。
それを防ぐために日銀が国債を買えば今度はインフレを抑えられないという論調。
小黒氏は、MMTはインフレにならない限り、財政赤字を膨らましていいとするが歳出削減や増税では物価上昇は止まらない恐れがある。
インフレはいつどんな形で生じるか分からない。
インフレを簡単に抑制できるというのならアルゼンチンなどで成果を出してからにして欲しい。
いろいろな意見があるが総じて日本の経済学者やエコノミストはMMTに懐疑的である。
小生の見解
本当にそんなにうまい話があるのだろうか。
一般的にいうと、物の量と生産性が一定とした場合、貨幣量を2倍に増やせば貨幣価値は半減するかモノの値段は倍になってもおかしくない。
MMTは貨幣供給量を増やしてもインフレにならなければ構わないというが、じゃぶじゃぶ印刷されたお金は顕在化せず、預金などで退蔵され、世の中に今のところ流通していないだけのことだ。
使うお金が欲しい若者や中間層にはお金がなく一部の富裕層や高齢者のところに偏在しているのではないのか。
高齢者はあまりお金を使わない。
富裕層も使うといっても社会全体から見れば数が少ないので消費に大きな影響は出ない。
いずれ何かの拍子に国債の金利上昇による国債の暴落、ハイパーインフレの出現等が問題化してくると思う。
30年前にこの国のバブルを経験している世代は不動産にお金を回しにくいのは確かだろう。
お金は海外の不動産や株、国債といったものに向かうのだろうか。
今はじっと現金という火薬があちらこちらの大きな火薬庫の中で積み上げられているだけのことだ。
いつこの国の火薬庫は爆発してもおかしくない状態なのだ。
一度爆発したら政府はなかなか制御できないだろう。
MMT論者の甘い誘惑論に乗って日本という船を沈没させてはならない。
それとも政府は寧ろハイパーインフレにでもなって国の借金が一夜にして半減するのを待っている。
まさかそんな夢を見ているのではなかろうか。