6月23日英国は欧州連合(EU)から離脱するかどうかの国民投票を行いその結果、離脱支持票が1714万票(51.89%)となり離脱が決定的になった。大方の予想は残留派が勝利すると思っていたのではないか。
結果は重く受け止めねばならないがEU離脱で欧州間の関税が復活し離脱後はヒト、モノ、カネの移動にも大きな制限がかかることになる。
英国にある日本企業の戦略にも悪影響を及ぼすことは必至だ。英国が抜ければEUの規模は人口で1割強,GⅮPで約2割縮小する為単一市場としての魅力も相対的に低下する。
離脱により英国は今後2年間でGⅮPが最大で6%減少するという試算もある。2004年、EUが領域を旧共産圏の東欧に広げたのを機に多くの労働者が英国に移入してきている。
移民は日当90ポンド(約1万3千円)で喜んで働くという。英国人は150ポンド出さないと集まらないらしい。
ロンドンでは土木作業員やレストラン従業員の大半が移民だそうだ。EUが掲げる「移動の自由」のはざまの中で英国の労働者は不満や苛立ちを募らせてきた。
昨年の英国の移民の純増33万人、英国は離脱で流入を抑制する術を手には入れたがもはや移民の労働力なしで成立し得ない経済構造(移民を低賃金で雇用)を自らつくったのも事実である。
加えてEUに支払う多額の拠出金、諸々の制約、こうしたことがプライド高く、自主性を重んじる英国の国民性(離脱派)に勢いをつけたという側面もある。
しかしながらEU離脱決定から約2週間経った今になって離脱派の主だった面々は離脱派を説得させる大きな要因だったEUへの拠出金を国営医療制度に充てるといった公約は間違いだった云々といって早くも前言撤回、事態は大きく混乱の様相を呈してきている。発信力のある声の大きい政治家のミスリードによる代償は大きい。
難破船から真っ先にネズミが逃げ出すように離脱決定以降、投資家は英国から徐々に投資委金を引き上げつつあるという。不動産ファンドの解約により不動産価格も下落に転じているらしい。
「イギリス人は歩きながら考える」「フランス人は考えた後に歩き出す」「スペイン人は走った後に考える」という俗諺がある。今回の判断はイギリス人とスペイン人の国民性が入れ替わったような気がする。議会制民主主義の成熟した国がなぜもっと時間をかけて議会で議論を戦わせ慎重に最良の選択をしなかったのか。
英国の離脱により欧州の他の国にも離脱ドミノが波及しグローバル化の終わりが始まろうとしているのか。個人的感想としては今回のイギリス国民の選択はオウンゴールのような気がしてならない。