鑑定士のひとりごと

特定空家等

以前に空家問題について若干触れたことがあるが今回は平成27年5月26日に完全施行された空家等対策の推進に関する特別措置法について一連の流れと若干の問題点を整理してみる。

まずこの法律の第2条において「特定空家等」とは、

①そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態

②そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態、

③適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態

④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

にあると認められる空家等と定義されている。

したがって建築物自体でなくとも擁壁が老朽化し危険な状態にあるとか、吹き付け石綿が飛散し暴露する可能性が高いとか、浄化槽等の放置、破損等による汚物の流出,臭気の発生があり地域住民の日常生活に支障を及ぼしている,或いはゴミ等の放置不法投棄により地域住民の日常生活に支障をきたしているといったことなども該当する。

市町村長には当該市町村の区域内にある空家等の所在及び当該空家等の所有者等を把握するための把握する為に必要な調査権を認めている(法第9条)

所有者等による空家等の適切な管理を促進するための助言、情報提供のほか必要な援助に努めるとしている(法第12条)

その後、市町村長が特定空家と判断した場合、それに対して助言、指導するわけだが改善が認められない場合は相当の猶予期間を設けて必要な措置をとるよう勧告、命令ができる(法14条2項、3項)

市町村長は必要な措置を命じてもそれを履行しないとき、履行しても十分でないときは所有者に代わって行政代執行できる(法14条9項)。

仮に所有者不明の場合は略式執行できる(同条10項)

このようにして最終的に問題のある空家等については改善乃至は取り壊されていくということになる。

国土交通省では特定空家の判断について法第2条の①~④について「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)でより具体的に説明をしているが詳細については省略する。

この措置法及びガイドラインを基本として各市町村長は施行細則を作りそれぞれの地域の実情に合った特定空家等の判断基準を定めるのである。

ここで問題なのは特定空家の判断を実務上いかにして行うかということである。

この法律の施行により各自治体は今後「特定空家等」の問題解消に向けて本格的

に動き出すことと思うが果たしてどの程度のスピードで問題解消が図れるのだろうか?

因みに小生が居住する人口約52万人、世帯数約23万世帯を擁する松山市についてみてみる。

松山市の平成27年度の空家等実態調査報告書によると

ⓐ 倒壊の危険性があり修繕や解体など緊急性の高い空家が約2000棟

ⓑ 倒壊の危険性があり解体など緊急性が極めて高い空家が約800棟

あるということである。

ⓑだけでも約800棟市内にあるのだがこれだけの棟数のどこから手を付けていくのか。

住宅密集市街地などは防災、防犯面でも緊急を要する。そうした地域からまずは始めるということになろうか。

市の助言,勧告により所有者自ら積極的に問題解決に当たってくれる場合もそれなりにあると思う。そうした場合も含めて仮に月間4~5棟、年間50~60棟解消していくとしても約15年近くかかる計算になる。

昭和40~60年代、経済の高度成長や人口増加と共に住宅は郊外へとスプロール化していった。現在は逆に人口減少である。そして今まで郊外に住んでいた戸建て住宅の居住者は高齢化により市街地の利便性の高い中高層マンションへの居住移行などもみられる。老朽化した郊外の戸建て住宅は引き継ぎ手もいない、購入者もなかなか現れないということで今後ますます空家として増え続けるものと予測される。

特定空家等問題はまさにイタチごっこ、賽の河原、エンドレスである。

行政もそれに多くの人手と費用をかけなければなるまい。これ全て税金で賄われるのである。

2015年の日本人の平均寿命は女性87.05歳、男性80.79歳で戦後一貫して伸び続けている。それにつれて介護費、医療費も右肩上がりに伸びてきている。生活保護受給者約200万人のコストも相当なものである。言葉は悪いかもしれないがこれらは殆どが後ろ向き?の費用で決して生産的とは言えない。

因みに我が国の平成28年度の一般会計予算を見ると約97兆円、そのうち税収として約58兆円ということだから税収は予算の約6割で残り4割は借金(公債金収入)で賄っているということになる。

出を制すというが、国家予算は入る方より出る方が圧倒的に多い。国の借金は膨れ上がる一方である。これでは国も財政規律の健全化をいくら叫んでも「日暮れて尚道遠し」である。政治家の巧言令色はいい加減聞き飽きた。この国の将来は本当にどうなるんだろうか。若い人が将来に希望を持てない気持ちもよくわかる。

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