四国に新幹線は必要か
結論として
利便性等の面から見ても勿論ないより有るに越したことはないが費用対効果などを考慮すると四国には必要とは思われないというのが小生の結論だ。
四国では2017年7月に「四国新幹線整備促進期成会」が設立されて早期実現に向けて官民一体となり努力を重ねている。
全国新幹線鉄道整備法で新幹線鉄道とは主たる区間を列車が時速200キロ以上で走行できる幹線鉄道と定義されている。
推進派の言い分
新幹線誘致派は九州、北海道、北陸にも新幹線網はできた。
今や新幹線がないのは四国だけだという。
言われれば確かにその通りだ。
四国に新幹線が未だできないのは整備しても所詮、元が取れないからということではないのだろうか。
まず整備費等は具体的にいくらぐらいかかるのか真剣に議論されたように思えない。
或いは整備費の試算はあるが公表していないだけということなのか。
具体的な整備費用が不明なのである。
新幹線の整備は公共事業と同様で費用のほとんどは国、自治体が負担してくれるのでJRの実質負担は事業費の1割程度なので対応可能だというのである。他所が整備しているから四国もこの際要求しないと損をするだけという論法だ。
いくらJRの負担が少ないといっても税金を当てにしての新幹線整備なのである。
所詮税金なら他所で使われるより自分のところにお金を落としてもらったほうがいいということだろう。
従来みんながそんなことをしてきたから国の借金は膨大に膨らんできたのではないのか。
こうした考えは今後改めて行くべきだ。
伊予鉄道社長の弁
松山商工会議所の副会頭で伊予鉄道の清水社長が今月の松山商工会議所報(№739号)でこう述べている。
「瀬戸大橋は新幹線が走る設計になっている。
岡山で分岐して瀬戸大橋を通り宇多津までまず整備する。
この整備に約2000億円必要です。
北海道、北陸新幹線の完成を待っていると四国になかなか順番は回ってきません。
今すぐこの四国新幹線の整備をスタートさせるには国鉄民営化の際国が設置した経営安定基金2082億円を活用してはどうか。
本来この運用益でJR四国の赤字を埋めるのが目的だったがゼロ金利の時代だからこの基金を前向きな投資に当てるべきだ」と言っている。
清水社長は国交省時代に九州新幹線の着工と財源問題に関わっていただけに説得力があるが在来線は赤字続きなのでこのお金はあくまでも当初の予定通り経営赤字の補填に使うべきものではないのか。
四国に新幹線を整備するといくらかかるのか?
2000億円は岡山から宇多津までの整備である。
四国内に新幹線網を整備するとなると一体いくらぐらいかかるのか。
神戸~鳴門間、瀬戸大橋、しまなみ海道、それぞれに約1兆円かかったと言われている。
松山~高松間の高速道路も約1兆円と言われている。
あくまでも素人感覚であるが新幹線は高速道路にかかった費用以上にかかるのではないだろうか。
新幹線では松山~高松間が現在の142分から42分に短縮される、
松山~大阪間が3時間30分から1時間38分に短縮されるというのは確かに魅力的だ。
仮に出来たとした場合、高松松山間のどこに停車するのだろうか。
停車駅はいいとしても通過駅は今以上に廃れることは間違いない。
新幹線開業を機に関東から北陸への観光客は飛躍的に増加したというのは事実だろう。
四国の新幹線整備は四国地域の活性化にとどまらず、関西の活性化、国土の均衡ある発展に大きく寄与するというものだ。
JR四国の現在の経営状況
JR四国の現状を見てみよう。
過去10年間JR四国の鉄道運輸収入は概ね220億円から240億円程度だ。
非鉄道事業を含めた2020年3月期の売り上げは概ね500億円で21億円の最終赤字、21年3月も12億円の赤字が見込まれているということのようだ。
やることはまず在来線を含むJR四国の経営健全化だろう。
四国4県の総人口は19年10月時点で372万人と1990年よりも約47万人少ない。
人口減による利用者の減少が経営悪化の一因になっているのは間違いない。
また既存の鉄道設備の老朽化、その管理保全に相当の費用がかかるということも事実だろう。
路線全体の約75%が開通から80年を超えており設備更新が見込まれるという。
そんな閉塞状況を打破したいがためにJR四国の赤字体質を大きく転換する起爆剤として新幹線整備が語られるのだろう。
新幹線ができれば在来線はますます取り残され経営悪化が進むのではないのか。
新型コロナ問題
ビジネスにしても旅行をはじめとする人々の生活スタイルにしてもこの春の新型コロナウイルスの問題を契機としてそのあり方が大きく変わっていくものと予測される。
すぐにいけそうでなかなか行けない四国というキーワードでいいのではないか。何百年と連綿と続く四国遍路は急いで回るというよりもゆっくり回るから価値があるのである。
狭い日本そんなに急ぐことはない。
子孫の為と思って新幹線を誘致しても将来それが大きな負債になる可能性も高い。
子孫に新幹線網の整備という資産を残すことにはなるが残ったのは古びた設備と莫大な借金ということになりはしないか。
そうした新幹線誘致に血道を上げるよりも四国の各街のそれぞれの魅力を高めることに注力すべきだ。
そこに行かないと味わえない文化の香り、温泉、グルメなどなど地方独自で工夫することは一杯あると思う。
ちょっと不便なところだが行ってみたいというそういう街づくりを期待したい。新幹線の走っていない唯一のところ四国を逆にキャッチフレーズにして四国の魅力度を高める努力をすべきだ。
沖縄本島から南西に約400キロ㍍離れた人口たかだか5万人の石垣島になぜあれほど観光客が憧れ、訪れるのか。
便利さは真の価値創造には繋がらないように思う。
誤解を恐れずに言わせてもらうと四国の人が新幹線を望む気持ちほど四国以外の人は新幹線を望んでいるように思えない。
多くの人が望まないものを求める必要があるのかとも思う。
所詮税金で整備するのだからしないと損のような考えはいかがなものか?
仮に整備されたとしても収入に対する管理費用、維持費用がまかなえるのか。また50年後、100年後の設備更新費用はどうするのか。
こうした視点はほとんど語られておらずとにもかくにもまず新幹線整備ありきというのはいかがなものだろうか。