沖縄が本土に復帰したのは終戦後27年経った1972年なので今年の5月15日で45年を経過したことになる。未だに多くの米軍基地を擁し市街地に近い普天間飛行場(宜野湾市)を名護市辺野古へと移設しようとする問題で国と県は激しく対立している。
日本国内(本土)も終戦間際には多くの地域で大規模な空襲を受け多くの人が犠牲になった。また広島、長崎では原子爆弾まで落とされこれまた多くの無辜の民の命が失われ今も尚、後遺症で苦しんでいる人がいる。
そうした日本国内が塗炭の苦しみをしていた中で沖縄は唯一地上戦が行われたところでもある。沖縄戦とは太平洋戦争末期の1945年3月下旬慶良間諸島に米軍の上陸から始まるが主要な戦闘は沖縄本島で行われた。当時の参謀本部の計画では沖縄守備隊の主要任務は沖縄本島をはじめ南西諸島を本土として守り抜くことではなく守備隊と地元住民を盾として米軍をできるだけ長く沖縄に釘付けにしておくことだった。結果、無条件降伏という屈辱的な結末で終戦を迎えたわけだが出来るだけ沖縄で時間を稼いでその間に国体の護持など、なるべく良い条件で終戦条約を結ぶためのものだったということを歴史が物語る。
沖縄は本土の捨て石にされた。沖縄県民にはかつて本土に見放されたという消し難い過去の怨念みたいなものが依然として残っているのだろうということも沖縄の基地問題を考えるうえで避けて通れない事柄だ。沖縄に未だ多くの基地がある限り沖縄県民の戦後は終わらないのが素直な感情だろう。
現在沖縄の在日米軍専用施設の面積は1万8609㌶、復帰時の1972年5月の約2万7893㌶から見ると約3分の1減少している。しかしながら未だに米軍基地の沖縄への依存割合は70.6%を占めているという。日本の国土面積が378000㎢に対して沖縄の県域面積は2271㎢、国土面積の実に0,6%しかないにもかかわらずだ。これが戦後70数年経った今も尚続く沖縄の基地負担の現実である。
一方でこんな現実もある。沖縄タイムズ紙によると2011年の軍用地の借地料支払い総額が年額918億円になるということだ。地権者総数は4万3025人、1人当たり年間、数十万円から10億円を超える人までいるらしいが平均すると1人当たり年間200万円強になる。
興味深いのはこの借地料が1㎡当たり平均年額約2000円ということだ。沖縄にはこの借地料を投資対象とした「軍用地投資」というビジネスがあるらしい。地元の不動産業者が普通に取引の仲介をしているということだ。
運用利回りは年2、5%~3%ということで国内では0金利が長らく続いているということ、借り手が米軍用地イコール日本国であり踏み倒されることはまず考えられないということなどを考慮すると極めて安定した良好な投資先と言える。沖縄にとっては地権者4万人余りを擁する大きなビジネスになっても不思議でない。貸し倒れのない相手でリターンが2,5~3%は投資家にとっては大きな魅力であろう。
普天間が辺野古へ移転するということになったらその後の借地はどうなるのだろう?基地が立ち退いた後の跡地利用の再開発で借地にされていた土地の価値は上がるのかそれとも下がるのか。それにしても1㎡当たり2000円ということは2,5%で資本還元すると借地全体の1㎡当たりの平均収益価格は8万円ということになる。
また年額借地料918億円を2,5%で資本還元すると3兆6720億円という膨大な額になる。理論的には3兆6720億円する土地を年間918億円で借地しているということになる。市街地に近接した軍用地、基地もあると思うが辺鄙な地域の軍用地、基地もあろう。不動産の評価を生業にする小生から見てもその平均価格が1㎡当たり8万円というのは正直いってかなり高額ではないかと思う。
普通平坦地の宅地であっても面積が結果的に広大になれば開発に当たって道路や公共施設も必要となりせいぜい有効宅地は5~7割程度だろう。そういうことも併せて考えれば尚更のこと1㎡当たり8万円は高いのではないのか。仮に3%で還元しても土地価格は約3兆円ということになる。
沖縄県の2018年度の当初予算は7542億円、そのうち国からの一括交付金と言われるものが1613億円ということだ。現実的ではないにしても仮に沖縄の基地を全部撤退した場合おそらく一括交付金もかなり減額されよう。軍用地として貸していた借地料もなくなり、交付金も減額された沖縄は現在のような経済状況を果たして維持していけるのだろうか。基地反対を叫ぶ裏で現実にはこうした経済事情、沖縄の内部事情もあるということを理解して沖縄の基地問題を語らないといけないと思うが沖縄県民にとっては要らぬおせっかいなのだろうか。