四国における相続税の現状

2015年の高松国税局管内の相続税の申告状況が公表された。

同年中に四国での死亡者数は4万9045人と例年並みとのこと。そのうち課税対象者数は3024人で実に97%の増加ということである。これはご承知のように15年1月からの基礎控除の引き下げ(基礎控除5000万円が3000万円に又相続人1人当たり1000万円の控除が600万円になり相続人が妻と子供2人の場合、従来は8000万円の控除だったものが4800万円)によるところが非常に大きい。税額は前年より71%増加し330億円とのことである。

相続税の改正により課税対象者、税額が大幅(倍近く)に増加した。基礎控除の引き下げは従来、課税対象でなかった人が今後は課税の対象者になるということ、相続税は金持ちにかかる税金と思っていたがだんだんとそうではなくなってきている。

2015年の330億という税額は1994年以降3番目の高水準だということだ。1994年というとは平成5~6年の時代である。その当時は全国で不動産バブルが崩壊して間もないころであった。ざっくりとした話になるが松山市においても立地条件にもよるがその当時からの地価は住宅地で約半値、商業地で約2~3分の1にはなっていると思う。

相続財産は預貯金や有価証券もあるから仮に土地の構成比が相続財産の3割程度だとしても地価が半値以下になったにもかかわらず相続税額は増えているということは基礎控除の引き下げによる増収効果が地価の下落以上に大きいということと、その当時に比べ有価証券や預貯金が増えたからだろう。

納税者約3000人のうち1割の300人が相続税路線価評価に依るよりも鑑定士による時価評価の方が下がるとした場合、ここは我々不動産鑑定士にとっても大きなビジネスチャンスになるのではないか。

今後、官需にさほど頼れないとした場合いかにして民需を開拓していくかということが鑑定士の生き残りにとってとても重要なことである。

四国管内の税理士数は平成28年8月現在で1560人ということである。税理士1人当たり1年で平均2件の申告書作成ということになろうか。税理士も申告の際路線価評価と鑑定士による評価とどちらが低いか迷うケースもあると思う。或いは相談するような親しい不動産鑑定士を知らないので相談するのも面倒だといったこともるかもしれない。申告をする納税者は元より、税理士、会計士にいかに鑑定士による時価評価の方が税務上メリットのある場合があるということを折に触れて理解してもらうように鑑定士個々人の努力は元より協会あげて啓蒙活動をすべきだろう。

我々も事前の調査(机上でもある程度メリットの有無は分かると思う)でメリットが出ないと判断される場合は相談だけなので無料サービスでいいではないか。そうして納税者や税理士、会計士に何時でも気軽に相談に乗ってあげるという雰囲気づくり、姿勢を示すことがまず大切だ。

因みに県別の納税額は香川県が114億円、愛媛県が102億円、徳島県が70億円、高知県が43億円だ。人口はというと平成26年においては香川県約98万人、愛媛県約140万人、徳島県約76万人、高知県約74万人である。相続税の納税額を人口比で見ると香川県がどうもお金持ちが多いことが窺える。

香川県は圏域面積こそ小さいが山間部が少なく宅地の人口密度が高いということも一因だろう。少し悔しいけどやはり四国の中心は高松なのか。続いて徳島県、そう云えば徳島県は1人当たりの貯金額も全国でトップレベルだということを以前にも聞いたことがある。狸ではないが山あいの年寄りが?葉っぱでさえお金にするところだからなかなかのものである。それに吉野川の恵も大きいのだろう。

納税額では四国で2番目だが実質3番目に愛媛県ということになる。理由はよくわからないがなんとなく頷ける?

名実ともに後塵を拝したのが高知県、香川の実質、半分である。四国の中で相対的に地価も安いということも一因だろうが所得も低く、預貯金なども少ないということか。支払う税金が少なくてよかったね、で済む話ではないが如何ともしがたい問題ではある。幕末維新の風雲児、坂本龍馬を生んだ県でもあり、太平洋を大きく望む桂浜の沖には潮吹く魚が泳いでいるくらいの気概の大きな県民だからこの際相続税額がどうのこうのといったコンマイことはどうでもいいか?

四国における相続税の現状
トップへ戻る