鑑定士のひとりごと

地方軽視の一票の格差

1票の格差是正のため島根・鳥取そして徳島・高知の選挙区を合区して今夏の参議院選挙を行った。しかし尚、広島高裁岡山支部は「違憲状態」という判決を下した。判決は最高裁が「違憲状態」とした前回2013年選挙の4.77倍から合区によって3.08倍に縮小した努力には一定の評価を示したが両裁判所の判断はもっと平等化を図れということだろう。

1票の格差を更に是正するための方策として人口の少ない隣接県同士も含めさらに合区の数を増やすとか都道府県単位でなく、全国を複数に分割するブロック制、「身を切る改革」に逆行することになるが選挙区の定数を増やし格差是正する案など出ている。

このままいけば次回以降の参院選で合区対象地域がさらに拡大し過疎化が進む地方はますます国会議員の数が減る。

言われることはごもっともであるが果たして一票の格差を縮めることだけが本当にこの国のためになるのか。過疎化の進む地方は国会議員の数が段々と減りその分地方の声が国政に届かなくなる。安倍首相は経済効果の恩恵を「全国津々浦々まで」とか「息を呑む様な美しい棚田を先祖代々まで守らないといけない」というが言っていることと逆行することになりはしないか。或いはそれとこれとば別ということなのか。

先日、愛媛と高知県の県境、山あいの過疎地域に不動産の調査に行ってきた。小学校は町場の小学校に統合され廃校。空き家も相当目立つ。商店もほとんどなく高齢者ばかりといった印象を受けた。たまたま訪れた時が稲刈りも終わり秋祭りの前だったので地域総出?で山の雑木や竹林を伐り、道端の草刈りなどを行っていた。

美しい棚田も段畑も地区のお年寄りたちの手によって今のところ辛うじて守られていた。しかしこの人たちがいずれいなくなるとこの集落は一体どうなるのだろうか、猫の額ほどしかなく且つ生産性も低い、しかしこの美しい棚田を一体誰が守るのだろうかと思う。 

中山間地の山や畑もそこに住む地域のお年寄りたちに営々と整備されてこそ山であり畑である。棚田も放置されてしばらくすると保水力を失う。中山間地域での日々の生活があってこそ美しい川を経てプランクトンの豊富な水が海へと流れ海洋生物を育むのである. 私たちが沿海部のおいしい魚介類を食べられるのもひいてはこうした中山間地が名もなき人たちに営々と守られているからこそである。

国会議員の数が人口比例に一致することが本当に国民主権の政治の原則だろうか。

小生はそうは思わない。人口が国内でこれだけ偏在していれば人口比で1票当たり3倍ぐらいの格差があっても寧ろ自然ではないのだろうか。アメリカでも上院は1票の格差に関係なく州ごとに2人の議員を選出しているということである。小生の所属する不動産鑑定士協会の本部構成について少し述べる。因みに会員数は今年の7月現在役5500人である。会長は全国の会員の投票により2年に1度選出する。さすがに地方では所属する会員数が圧倒的に少なくどうしても会員が2047人いる東京支部から選ばれることが殆どであるが理事会は各県士協会の会長が本会の理事となり理事会を構成し本会の主だった事項の最終議決機関として機能している。我が協会の全国の会員数は5440人という小所帯である。会員数比からいえば東京支部2047人、近畿支部864人、中部支部438人これに関東甲信支部884人を加えると計4233人で実に会員の約8割強を占める。会員比例でいくと理事数47人のうち38人が都市部及びその周辺の会員で占められてしまうことになる。そうすると地方の声は殆ど反映されないで都市部の都合で協会運営が行われるということになる可能性がある。はたしてそれが本来の鑑定士協会の在り方として正しいのか。各県士協会長が本会の理事を務めるということで多様な意見を吸収、反映させることができるというメリット大きさの為、未だかつて会員数割で全国の理事を出そうという話は聞いたことがない。実に賢い選択だと思う。弱肉強食、経済至上主義だけでは健全な組織は成り立たない。

全国にはいろいろな組織や団体があると思うが概ね全国から遍く人材を求めて組織を構成するというのが実情ではないか。人口比例で国会議員を選ぶというのは一見平等に見えて実に弊害の多い。過疎、少子高齢化、若年層の都会志向など放っておいたら確実に疲弊していくのが地方の現状である。

幕末、江戸湾に黒船が出没し日本に開港をせまった。制度疲労を起こし右往左往していた徳川幕府であったが維新を起こしその後の日本の繁栄を築いたのは薩,長、土,肥を中心とした地方の外様大名の家臣たちである。(第2次大戦により多くの犠牲者を出しこの国を塗炭の苦しみに陥れたのも彼らに責任の一端はあるが・・・)

地方創生を叫びながら地方の声を無視?しようという意見はこれからの時代に逆行する選択になると思うのだが。

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