ポピュリズムは国を滅ぼす?

ポピュリズムとは

ポピュリズムとは1892年に結党されたアメリカ合衆国の人民党、通称「ポピュリズム党」を通じて広まった言葉である。一般的には

  • 政治、経済、文化エリートに対する異議申し立て
  • 主権者として代表されていない人々の掲揚
  • カリスマ的な指導者による扇動

などを特徴としている。

既存の利益団体や職能団体に包摂されておらず政治的に正当化されていないと感じている層(農民や単純労働者など)の不満を吸い上げ既得権益層や過度に保護されているとされるマイノリティを非難することで動員を図ることを特徴としている。(ブリタニカ国際大百科辞典より)

ポピュリズムはもろ刃の剱

ポピュリズムがエリートの腐敗や特権を是正するという方向に向かえば改革の大きなエネルギーとなる。

反面、大衆の欲求不満や不安を煽るだけ煽ってそれを基にリーダーへの支持を取り付けるということがまかり通れば衆愚政治に繋がり、それが結果的に自由の破壊、集団的ヒステリーへと向かう恐れがあると言われる。(朝日新聞出版社発行、知恵蔵より)

5月26日の日経新聞第一面を見るとギリシャやイタリアなど失業率の高い国ほどポピュリズム政党への投票率が高く過半数を超えているということだ。

直接的な要因の一つとしていずれの国も長引く不況に国民の不満が募っているということだろう。

ポピュリズムはややもすると税金のバラマキにより大衆の人気を惹きつけるということが通常行われる。

挙げ句の果ては財政規律が悪化して景気の自律的回復さえもできなくなるという悪循環に陥りかねない。

ポピュリズムの悪用は経済のデフレスパイラルを招きかねないというリスクを孕んでいるということだ。

イギリスのEU離脱

イギリスは2016年6月23日に行ったEU離脱かどうかの国民投票の結果は離脱支持51、89%という僅差で離脱支持派が残留支持派を上回った。

このような結果が出た背景にはEUへの過大な費用の拠出や国内の失業率の増加がある。

主に若者の不満が増大、そして失業率の増加は移民の増加が大きな原因だとして若者を中心とした国民の不満がエスカレートし僅差で離脱派が上回ったというわけだ。

EU残留支持だったキャメロン首相はまさかこんな結果になるとは露とも思っておらず国民投票に踏み切った。

結果、離脱支持派の勝利で彼は辞任に追い込まれ2016年7月13日、離脱支持派のテリーザ・メイ内相が新首相に就任した。

しかしメイ首相も残留か離脱かのはざまの中で大いに迷走し結論を出せないまま今年の6月にやむなく辞任に追い込まれる事態となった。

イギリス経済は外資に大きく依存しているだけにグローバル企業や国際的な大手金融機関などは不安や不信感が募るばかりだろう。

この問題もポピュリズムのひとつの表れなのかもしれない。

ポピュリズムが大衆の目に見えない漠とした大きな支持を受け、一部の指導者が大衆を扇動しあらぬ方向に国を向かわせてしまったというのがイギリスのEU離脱問題に対する小生の見立てだ。

ポピュリズムの迷走と国の衰退

ポピュリズム、イコールファシズム、ナチズムという訳では決してないが歴史の事実として選挙民一人ひとりが心しておかねばなるまい。

格差社会の是正、国民の共存共栄のためにはある程度、国や社会に依存することは決して悪くはない。

寧ろそのために国家があるといってもいいくらいだ。

しかしこれも行き過ぎると国民にとって時として弊害になるということだ。

日本という国が平成時代に築いた膨大な借金はこの国の経済の成熟、少子高齢化という経済的、社会的要因もあるとは思う。

しかしやはりこれは人災だろう。

「サルは木から落ちてもサルだが政治家は選挙で落ちるとタダの人」だからか殆どの政治家は身を切る覚悟ができていない。

政治家が明確な将来ビジョンに沿って国民にやおら迎合することなく身を切る覚悟で粛々と正しい政策を行ってさえいれば若者を始め国民が将来に漠たる不安を抱えたまま生活するという事態にはなっていなかったのにと思う。

政治、政治家の劣化は国民の劣化、ひいては国家の衰退を間違いなく招く。

ポピュリズムは国を滅ぼす?
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