ハイリスク・ハイリターンは世の常識?

サブリース

不動産のサブリース(転貸借)が問題になっている。

サブリースとはビルやアパートなどを所有者から、不動産業者などが丸ごと或いは一部フロア―を借り上げ、入居者を見つけてまた貸しをする契約をいう。

以前は企業間でもオフィスビルなどで幅広く行われていたがバブル崩壊後、不動産市況が悪化すると一定の収益保証をしたはずの不動産業者による賃料の減額を求める訴訟が相次ぎ、サブリースはその後下火になっていた。

しかし10年位前から遊休地を持つ地主の相続税対策やサラリーマンの定年後の安定収入の確保をといった目的により再びサブリースはゾンビの如くアパート経営などで普及している。

しかしながらサブリース自体の制度は決して悪いものではないのだがリスクを十分に理解しないで営業マンの甘い言葉に乗って問題のある、変な?物件を購入すると後でひどい目に遭うというよくあるパターンだ。

 

生じた問題

契約後、数年して入居状況が悪化したといって業者から家賃の減額を要求される。

それに応じなければサブリース契約を解除すると迫られるわけだ。

国土交通省によると登録業者の管理するサブリース物件戸数は2017年末、全国で290万戸を超えるらしい。

土地は親の代からの譲られたもので土地自体の借り入れはなく立地条件もよいため入居率も良好でうまく運営されているサブリース物件がサブリース物件の中にはたくさんあるのだろう。

また土地、建物両方の借り入れでもある程度、頭金を入れ、尚且つ立地条件の良い物件はまず自己管理してもサブリースにしてもさほど問題が生じることはない。

問題が生じるのはフルローン(購入物件価格の100%借り入れ)で、さほど立地条件も良くない物件が問題だ。

新築時は業者も物件を投資家に売却しないといけない為、何とか無理をしてでも入居者を一生懸命に探す。

しかし数年経つ頃から業者は新たな物件を売却すること、またその物件に入居者をつけることに注力して既存のサブリース物件にはさほど力が入らず,段々と櫛の歯が抜けるように入居者が出ていく。

それに融資先に困っている銀行が絡んでいるから余計ことが面倒だ。

売買契約書も二通つくり、銀行には多めの金額で契約したように見せかけ購入額一杯の金額を融資させる。

これが不動産業者、借り入れる本人、銀行の3社がすべて承知した上でのスキームだったというものだ。

銀行は多少融資物件に問題があったとしてもあり余ったお金を少しでも融資したい、投資家は一見美味しそうに見える饅頭を毒饅頭(立地条件の悪い不良物件)とは思わずに食べたがる(融資を受ける)、不動産業者は毒饅頭を美味しそうに見せてできるだけ高く物件を売ろうとする。

これでも入居者の退去もなくうまく賃貸物件が回っていればさほど問題は生じなかったのだろうがそうはイカのキンタマである。

だんだんと不良物件の本領が発揮さてくる。

その時にはすでにこの投資家としてはご臨終間近ということである。

「天網恢恢疎にして漏らさず」世の中はそんなに甘くできてはいない。

人間にスケベ根性(欲望)がある限りいつの時代にもこれと似た問題は起きている。

 

スルガ銀行だけなのか

ハイリターン商品はハイリスクなのである。

この場合のサブリース物件は後の具体例で示すが決してハイリターンではないのだが・・・

スルガ銀行は銀行あげて不正な?融資を続け、お蔭?で株価は1年足らずに間に1株2500円から600円まで落ち込み、実に約4分の1になった。

これまでスルガ銀行は全国の地銀の中でも屈指の利益率を誇り、一時は金融機関の風雲児とまで呼ばれた。

この利益の源泉がサブプライムローン?ではなくサブリースローンであった。

預金残高の水増しなどで審査基準をクリアする仕組み?を組織ぐるみで行い挙句の果てに多額の損失を被ったのである。

株主やこれに関わっていない行員にすれば大迷惑な話ではあるが・・・。

銀行としては自業自得のトホホ…であるがそのうえ銀行は金融庁から大目玉。

行員は行員らが融資の関連書類の改ざんに関わったとして、有印私文書変造・同行使の疑いで投資家から告発されるという憂き目にあっている。

所有者の自己資金を多く見せかけたり、売買契約書を改ざんしたりして通常なら融資を受けられない案件でも多額の融資を貸し付けたとみられるのが告発された理由とみられる。貸し出した銀行に全く非がないとは言わないが所詮それを承知でお金を借りたアンタも悪いのと違う?と言いたい。

全国地方銀行協会会長(千葉銀行頭取)は「起こり得ないこと」とまるで他人事のように言っているがこの問題は大なり小なりスルガ銀行だけの問題ではないと思う。

ここ数年全国でアパートマンションローンが急激に増えている実態が暗にそのことを物語っていると思う。

投資家も借り入れが出来た時で多少金利は高いが一銭も身銭を切らずにアパート、マンション経営が出来、いい調子になっていたに違いない。

したがって貸した銀行を責めてもしょうがない。

あくまでも不動産業者の甘言に乗ってサブリース物件を購入した借り手側の自己責任。

最終責任は多額のお金を、無理を承知で借りたあなたである。

 

陥穽にはまる具体例

それでは具体的にどのようにして投資家は返済に窮していったのか見てみよう。

例えば物件価格と諸経費込みで1億円全額借入れたとした場合。

返済期間30年(元利均等償還)

借入金利 3%

年間の返済額 (約510万円)

賃貸料800万円

諸経費込みの物件の投資粗利回り8%(物件価格1億円×8%=賃貸料800万円)

サブリースの為、不動産管理業者のマネジメントフィーが賃貸料の20%とすると800万円×80%=640万円、これから銀行への返済額510万円を差し引いた130万円が当初投資家の手元に残るお金だ。

一銭も身銭を切らずにお金が残る一見、夢のような話だ。

しかしながら平穏な生活はいつまでも続かない。

購入後しばらくすると固定資産税の納付請求書が役所から届くはずである。

おそらく時価1億円のアパート・マンションの固定資産税額はざっと50万円程度だと思う。

それでも差し引き80万円は一応手元に残っている計算になる。

月に直せば7万円程度、ちょっとリッチな気分になってもおかしくない。

当初の4~5年はなんとか業者の方も入居率を高め、当初保証した賃料を維持しようと努力はするが物件の立地によっては段々と空室が目立つようになり業者が保証賃料の減額を要求してくるようになる。

いよいよこれからが地獄のカウントダウンの始まりである。

仮に従来の入居率100%を入居率80%に変更した場合どうなるか。

賃貸料800万円×80%×80%=512万円ということになる。

物件購入後5年ないし10年経過した場合、サブリースによって得たお金の512万円はすべて、哀れにも銀行の返済へとまさに右から左へと消えてゆくのである。

しかし固定資産税は待ってくれない。

固定資産税は自腹で払わないといけなくなるのである。

そして築後10年ぐらいから部屋のリフォーム費用もかかりだすのである。

そのうち設備、外装費もということになる。

その費用はどこからも出ない!

お金がないからといって補修もせずに放っておくとますます入居率は落ちるという負のスパイラルに陥る。

地価や物価が右肩上がりで上昇する時代であればその段階で思い切って物件を売却したらトータルで何とかなったであろうが地価や物価が横ばい乃至は右肩下がりでは売却額よりも銀行の借入残高の方が多いという悲惨な現実が待っている。

少子高齢化で且つ経済が縮小していく中でのこうした物件の多くは最初から無理なビジネスモデルでサクセスストーリーは通常、描けないものなのである。

世の中そんなにうまい話は転がっていないということは頭ではみんな理解しているつもりでもついつい甘い話に乗って大失敗をしてしまう。

人間いつまでたってもやっぱり転んでけがをしてみないと分からないものなのか。

銀行も管理業者も悪いのは悪いが、欲ボケして甘い口車に乗ったあなたが最終的に一番悪いのでは?

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