今日は12月30日、今年も残すところあと1日となった。昨年は8月に刊行された土地白書だが今年は先月、11月10日に発行された。白書の中で以下自分の気になった内容の概要とそれについての感想みたいなものを述べる。
1、土地利用の概況
平成27年における我が国の土地面積は約3780万㎢。
そのうち森林が約2505万㎢(66,3%)農地約450万㎢(11,9%)その他道路、水路、河川、宅地などがある。
住宅地、工業地などのいわゆる宅地は約193万㎢(5,1%)しかないのである。
国土の中で長年相続登記されずに所有者の分からない不明土地が約410万㎢(九州に匹敵するぐらいの広さ)あるといわれる。不明土地の地目別内訳は分からないがおそらく評価が低い山林、農地が大半だろうと思われる。
昨日(12月29日)の日経新聞の第1面を見ると政府は所有者不明の土地や空き家問題の抜本的な対策として現在は任意となっている相続登記の義務化を目指すということだ。土地所有者の所在が分からなくなる大きな要因に相続登記の任意性の問題がある。
登記簿上の所有者が死亡した後、登記変更しないまま放置しておくと法定相続人はネズミ算式に増え相続登記はますます困難になる。
この弊害を防止する策としてはいいと思う。
また政府は土地所有権の放棄の可否も今後検討していくらしい。対策を講じないまま2040年を迎えると約780万㎢(北海道本島)に迫るとの推計もある。
早急な対策が望まれるところだ。
2、家計と企業の土地に対する意識調査
①家計
家計にとって土地の所有は生活の基盤である住宅用地等としての目的だけでなく資産としての目的も有する。
この資産としての目的意識がバブル崩壊後大きく変化してきている。
白書によると「土地は預貯金や株式などに比べて有利な資産か」という質問にそう思うとの回答が平成5・6年は6割以上だったのが平成28年度には約3割になっている。
因みに地方圏では29%と都市部より若干低い。地価の大幅な下落や所有のコスト、税金、利活用の問題などで土地に対する資産としての有利性が大きく落ちてきたといえる。
②企業
企業の土地に対する意識ついては「今後、土地について所有と借地・賃貸ではどちらが有利になると思うか」との問いに対して「今後所有が有利」と回答した企業の割合は平成5年度の66.7%から平成28年度は38.7%と大きく低下している。
今後地価は大きくは上昇しないだろうという意識が根底にあるのだろう。また借地・賃貸の方が事業の進出・撤退が柔軟に行えるとういうことも大きな理由に1つだ。
3,空き家の現状と対策
空き家の件数は近年大幅に増加してきており平成25年の空き家件数は約820万戸(住宅ストック総数の13.5%)であり世帯数の減少によりこの数は今後とも増加すると予測される。
特に別荘などの二次的住宅や賃貸用・売却用の住宅を除いた「その他の住宅」が急増している。
「その他の住宅」の数は全国で約318万戸と推計されそのうち最寄り駅までの距離などを勘案し、利用可能なストック数は全国で約48万戸と推計されている。
小生の住む愛媛県松山市においても空き家問題は深刻である。平成27年度の松山市の実態調査によると市内全域での空き家総数は約8,500棟になるという。そのうち倒壊の危険性があり解体などの緊急性が高い物件も相当数に上るということだ。
これといった明確な解決策はないのが実情だろうが行政だけがいくら頑張っても限界がある。また不動産業界だけがこの問題を解決しようとしても無理がある。ここは官民協調してのシステムが必要だろう。
入口のところで行政が窓口になるというのは市民にとって安心だろう。この時点で建物を取り壊したいのか、売買したいのか、賃貸したいのか、それとも現状維持を望んでいるのか。現状維持を望むとすれば今後どんな問題が生じてくるのかといった課題を役所と所有者とでよく相談をする。
そのうえで不動産業界に動いてもらう。不動産業界は売買などを希望する業者を厳格に選別し希望する業者の名簿作りをすることだ。
官民協調システムの中でトラブルが発生しようものならたちどころにこの制度自体が崩壊、頓挫しかねない。
希望する業者には研修などを通じて制度の趣旨をよく理解して貰うことが肝要だ。またこのような空き家物件は概して価値が低いものが多い。物件価格と仲介料はリンクしているので低報酬の物件にはあまり乗り気にならない業者もいるというのが本音だろう。
行政側が仲介料の一部を補助するということはできないのだろうか。
考えるといろいろと問題点が浮かび上がるがいずれにしても官民一体となった運営モデルを早急に立ち上げて解決を図る必要があろう。