そもそもこの問題は2013年の6月~9月に近畿財務局が国有地の売却先を公募したことから始まる。当該国有地を森友学園が取得を希望しその後地元選出の鴻池議員に便宜を図ってもらうべく陳情に行ったが鴻池氏には断られた。その後14年10月に土地取得を前提に学園側は大阪府に小学校の認可申請を提出した。15年1月大阪府の私学審査会は条件付きで認可適当と判断する。同年5月、学園側は近畿財務局と定期借地契約を締結するが同年10月、借地契約期間をめぐり昭恵夫人に相談。その後16年3月学園が地中にゴミがたくさんあると財務局に報告。もともとこの土地は沼地かため池だったらしく以前からごみの不法投棄があったということである。その土地をいつのことか詳しいことは不明だがそのまま埋め立てたものらしい。
学園側はこの際この土地を借地ではなく同年3月にこの際、買取りたいと財務局に申し入れ同年6月に鑑定評価額9億5600万円からごみの撤去費用8億2200万円を差し引いた1億3400万円で土地の売買契約を締結したというのである。これが森友学園への国有地売却問題の大まかな経緯である。
それにしても昨年の3月に買い取の申し入れをして6月には売買契約というのは国の払い下げにしては異例の速さである。ましてや通常の土地売買と異なり莫大な土壌改良費を考慮しての売買なので余計にその思いを強くする。小学校用地だからかなりの面積なのでゴミ撤去、土壌改良費は相当の額になるとは思う。撤去費用は国交省の大阪航空局が見積もったということらしいが未だに国はその根拠は明らかにしていない。なぜちゃんと説明できないことを拙速にやってしまったのか?
学校法人森友学園の名誉校長に安倍昭恵総理夫人がなっていることは近畿財務局などにも籠池氏は伝えていたとも証言している。一般的に考えれば総理夫人が直接ではないにせよ関与しているらしい?案件だということを慮ってキャリア組と言われる近畿財務局の役人が自分の将来の立身出世も絡んで霞が関から天の声がかかる前にスムーズに処理しておこうと思っても不思議ではない。それにしても売却を前提に公募しておきながら森友学園に定期借地で進めようとしたのはなぜだろう。また定期借地を解消して売却という話になれば改めて公募するというのが筋だと思うが。この点もうやむやで何ら説明がされていない。
当方も長年、不動産鑑定が生業で財務局の売却の為の鑑定評価や国交省の用地買収の為の鑑定評価をすることがある。鑑定書のドラフトの段階で協議することもあるがこのときの財務局、国交省の地方整備局の担当者は当方の提出した鑑定評価書の内容についてまるで舐めるようにじっくり時間をかけて検討する。ここまでやるかというぐらい細かいことを言ってくる。国民の大切な財産、税金を扱っているのだからこれは当然といえば当然だろう。
役所のそういったところを日ごろから知っているから余計に今回のこのスピードの速さ、内容の検討の杜撰には正直、疑問を感じる。通常のお役所仕事では考えられない。おそらく地方で直接国有地の売却や買収に汗水を流しながら携わっている名もなき?現場の公務員はこのことに大きな憤りを感じているに違いない。
今後どうなっていくのだろうか。籠池氏の証人喚問ももはや捨て身の覚悟のように見える。国は小学校ができない場合は建物を解体し土地を原状回復したうえで売却価格の1億3400万円で買い取るという買戻し特約を行使するという。テレビや新聞などを見ると小学校は今年の4月に開校予定で進んでおり殆ど出来上がっている。あの立派な校舎を壊し原状回復して土地を籠池氏は本当に返すのだろうか。国としては原状回復して売買代金を返還してもらうということが大前提だ。国は建物を壊して土地を引き渡しなさいということだからここでもまた学校設立に認可適当を出した大阪府と土地返却を求める国と認可適当のお墨付きの元に学校建設に突き進んだ籠池側との三つ巴になって揉めそうだ。国、大阪府、学園と3者三様、大なり小なりそれぞれ責任があるようにも感じられる。壊すことの不経済性の面からも世論も巻き込んで議論が起きそうである。
就学前の幼稚園児に教育勅語をそらんじさせ安倍総理大臣は国を救う人だと言わしめる。思想、信教の自由は現行憲法でも認められているとはいうものの、第2次世界大戦に突入し挙句の果て国民は完膚なきまで打ちのめされた。あの忌まわしい戦前の教育を思い起こさせる。
気持ちはわからないでもないが昭恵夫人を利用して小学校の設立をスムーズに運ぼうとした籠池夫婦の思惑が透けて見える。また籠池氏は安倍総理の知らない中で「安倍晋三記念小学校」設立という触れ込みで寄付金を集めたり、小学校の補助金申請の為に3通の金額の異なった校舎建設費の入った契約書をそれぞれ違った役所に提出している。ここらあたりになるともう犯罪行為そのものでありこの人に対する同情の余地は無くなる。
それにしても昭恵さんはもう少し公人であるか私人であるかの議論以前に現総理夫人としての自覚が足りないと思う。彼女の周りに人は始めは善意で近づいてきたとしても懇ろになるにしたがってそうした立場を利用しようとする人がいるのも頷ける。昭恵夫人のような人は人がいいというだけでは済まされないのである。
マスコミは連日大挙してこの問題を追及し国民は面白がって記事やニュースを退屈しのぎに見ている。お蔭で国会もこの問題で混乱しまくり重要な国に今後関わる多くの政策がろくに審議できないで状態が続いている。その損失たるや小学校の地下埋設物の除去費用8億円ぐらいでは済まない。
籠池氏の国会での証人喚問を見ているともう開き直っているとしか言いようのないように見えた。少なくとも昭恵さんには公私にわたってお世話になってきたはずである。そのような人までもこの際巻き込もうとする。自爆テロみたいだ。「死なば諸共(もろとも)」をもじって「死なば(森友」もりとも」という言葉が最近巷では流行っているらしい。
お隣の韓国の騒動を見て笑っている場合ではない。