先日(2015.9.1付)の日経新聞の経済教室欄にシンガポール国立大学教授の清水千弘氏の空き家問題の記事が掲載されていた。教授によると使い手がいなくなった空き家は社会の資源配分の最適性から考えれば取り壊されて新しい用途へと転換されていくことが望ましい。しかし現行の制度では空き家のまま放置しておいた方が固定資産税、相続税なども含めてメリットが大きい。従って「ゾンビ」のように増殖してしまう。このことは前回の小生のひとりごとの中でも指摘しておいた。今後、我が国は人口減少と高齢化が急速に進む中で、清水教授はこうした空き家が地価動向にどのように影響していくかを論述している。住宅価格の長期変動を説明するモデルでは1人当たりGⅮP(国内総生産)として測定された生産性の変化、総人口、老齢人口依存比率(生産年齢人口に対する65歳以上人口)が変数として使用されている。それによると2010~40年の30年間で現在の社会制度や国際的な人口移動の速度が大きく変化しないとした場合、総人口の減少と老齢人口依存比率の上昇による住宅価格の変動率は我が国においてはマイナス46%となるらしい。中国・韓国・香港なども同じように40~50%下落するということだ。教授は日本がこのような問題をクリアするために以下のような解決策を挙げている。
① 2040年までに全国で4000万人の移民を受け入れる(年間約130万人)
② 定年・年金の支給を65歳から75歳まで引き上げること
③ 効果は①②より少ないが女性の就業率を男性並みに高める。
どれをとっても簡単にいく策ではない。
これら3つの解決策を同時進行で進めていくことが急務であるといっている。さしあたり向う30年で1000万人の移民受け入れ70歳までの引き上げ、女性の就業率を70%程度にするという併せ技で何とか下落を免れることができる?人口問題から始まる年金、医療、介護、財政問題、須らく何十年も前から警鐘を鳴らされてきた問題である。政治がその場限りの弥縫策で済ませてきたことが大きな原因だと思う。30年後の住宅地価格の動向は以上のようなことであるが、振り返って30年前はというと丁度小生が独立開業した時である。バブル崩壊後約30年間、地価は下落し続け今後も下落が続くということである。政府は地方創生とか何とか言っているが地方に行けば行くほど下落幅は目も当てられないくらい大きくなるのだろう。中古住宅のリノベーションや住宅を担保に老後資金を融資するリバースモーゲージの積極的な活用、持ち家の賃貸化促進などといっても所詮、付け焼き刃的政策にすぎないと思う。30年後小生、寿命は尽きていると思うが頭の痛い悩ましい問題ではある。