パリ紀行(その5)

日は息子がそれぞれ別行動にしようというので1人でホテルを午前9時ごろ出る。

メトロに乗ろうかとも思ったが天気もいいし今日も主に歩いてみることにした。特に予定はなかったが今日はセーヌ川の左岸モンパルナス、サン・ジェルマン周辺に行ってみよう。ホテルから北西に向かいルーブル美術館方向へと歩く。日曜日だからか、サマータイムだからかわからないが車も少なく人もあまり歩いていない。朝早だからか店も多くは閉まっている。なぜか街路は斜めに走る道が多い。

道路沿いの建物は全て石造りで隣同士の隙間もなく壁面も揃って美しい。道が斜めに走ることによって一層、雰囲気を醸し出している。建物は概ね4~6階建てである。築100年~200年経過しているのだろう。

そうこう思っている間にリュクサンブール公園に着いた。公園のほぼ中央部に人工の大きな泉がありその向こうにフランス上院の国会議事堂(かつてのリュクサンブール宮)が見える。一幅の絵になっている。この公園はパリで最も美しい公園の1つと言われているのも頷ける。公園内の芝生や木々、花々もよく手入れされている。中でもいいなと思ったのがベンチやイスがことのほか多い。木陰に座って本でも読めば最高である。

アメリカの独立100周年を記念してフランスから贈られた自由の女神像がパリには2か所あるらしいがそのうちの1つがこの公園内にあるというので見に行ったが思いのほか小さいのがひっそりと佇んでいた。

公園を通り抜け南西に20分程度歩くとモンパルナス駅に着いた。フランスの南西部に向かう主要駅だ。トイレを懸命に探したが結局分からずじまいだった。駅でサンドウィッチとスムージーを買い構内でブランチにする。

駅で一服した後サン・ジェルマン教会へと向けて歩く。この教会はセーヌ川左岸派のパリジェンヌにとっては心の灯台ともいえる特別の場所らしい。この教会の名はここに眠るパリ司教サン・ジェルマンの名前を取ったらしい。またここには偉大な哲学者デカルトも眠っているということだ。

サン・ジェルマン教会に着いたとき丁度午後12時だったので鐘が鳴り響いていた。日本なら時の数だけ鳴らすのが普通だがこちらは結構多く鳴っていた。

そしてすぐ南にあるサン・シュルビス教会へ。入ってすぐ右に「ヤコブと天使の戦い」の壁画がある。この教会はトム・ハンクス主演の映画「ダ・ヴィンチ・コード」の中で謎を解く重要な場所としても有名になった。

その後近くのカフェでトイレ休憩も兼ねて一服。もう一度朝通ったリュクサンブール公園の中を通ってホテルに帰ることにする。

朝の公園は人影もまばらで静かだったがさすがに午後は日曜日ということもあり家族連れも含めて多くの人が出ている。この公園の広さが約25ha(ざっくり東西500メートル、南北500メートルという感じ)だからかなり広い。そこで持参していた本を1時間余り木陰のベンチに座り読む。

午後4時ごろホテルに帰りシャワーを浴び夕食を食べに行く。

4日目、今日も1日2人でよく歩いた。朝8時半ごろホテルを出発。最寄りのレ・ゴブラン駅からモンパルナス駅へ向かう。ここからコンコルド駅を目指す。ここで地上へ出てシャンゼリゼ大通りへと歩く。先日もこの大通りは歩いたので今日は裏道というか脇道を中心に歩こうと思う。

脇道にもサンローラン、フェラガモ、シャネルといった多くのブランドショップがさりげなく店を構えている。人通りは少ないのだが運転手付きか、彼氏の運転する高級車を横付けしてカードでいっぱい買い物をするのだろうか。

所詮小生には縁はないが街の雰囲気としてはそんな感じだ。凱旋門まで行ってここで息子と別れ自由行動とする。

私はメトロで近くのエトワール駅からムーランジュールで有名なモンマルトルに行くことにした。ムーランルージュの近くのブランシェ駅で降りてモンマルトルの丘の上にあるサクレ・クール聖堂を目指す。坂道をゆっくり歩く。

モンマルトルは19世紀末から20世紀初めにかけてルノワール、ロートレック、ピカソ、ゴッホといった今では世界的に有名な画家が移り住んでいた町としても有名だ。今でもピカソのアトリエ跡やゴッホ兄弟の住んでいたアパートが残っている。当時の画家たちが移り住んだ一番の理由は当時の彼らは駆け出しで貧乏だったこと、ここは郊外で坂道が多くパリの中心街に比べて家賃が安かったからみたいだ。

坂道と曲がりくねった石畳の道。からっきし絵心のない自分でもここはどこを切っても絵になるなと思った。丘の上にサクレ・クール聖堂が見えてきた。近くで見るとやはり大きい。聖堂の前の広場には多くの観光客で溢れている。

30人程度の似顔絵師たちがずらっと並んで観光客を相手に似顔絵を描いている。一枚だいたい30~50ユーロだったろうか。客は7~8割が女性で残りは子供と家族連れでという感じだった。描きつつある絵とモデルを見て回るのが結構面白い。

普通は実物より絵の方が綺麗?なはずだが小生は絵よりも実物の方が綺麗だと思った。だいたい顔に自信のある女性が描いてもらおうと思うものだ。出来上がった絵をモデルの女性が見る瞬間の反応がこれまた興味をそそる(ちょっと悪趣味?)。

お腹もすいてきたのでレストランで昼食をとることにした。詳しいことは分からないので店の表の小さな黒板に書いてあるのが本日のおすすめみたいなのでそれを指さし注文する。出てきたウエイターは日本語が少しわかるので(福岡に彼女がいるらしい)助かる。出てきた料理はカモ肉のグリルとジャガイモをスライスして炒めたもの。お腹がすいていたせいもあるがカモ肉が殊の外、美味しかった。それから麓までゆっくりおりて街を1時間ぐらい散歩しメトロを乗り継ぎホテルへと帰ることにした。

ホテルでゆっくりしていると息子も帰ってきてこれからオペラ鑑賞に行こうというのでバスティ―ユまで出ることにした。ここには約100年前に造られたオペラ座のパレ・ガルニエとは対照的で超モダンなオペラ・バスティーユがある。

勇んでいってはみたもののやっていない。それもそのはず1年でやっていない日の方が多いみたいだ(まあ仮にやっていたとしても予約なしでチケットが買えるかどうかも怪しい)。まだ明るいのでセーヌ川沿いに出て歩く。ポンピドーセンターの近くのレストランで夕食を食べまた街中を歩く。これまでにも見受けたが結構街中で物乞いをしている人が目立つ。パリには不似合いだと思うがこれもパリの一面かと思いながらホテルへと帰る。

パリ紀行(その5)
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